Presentation in Japanese

画像処理では、画像を二次元の格子グラフ上の関数とみなし、その関数を線型代数や微積の道具立てを用いて料理する。同様に、3次元空間内の形状は、グラフやより一般に単体複体上の関数とみなすことで、やはり線型代数やベクトル解析を用いて処理することができる。本講演では、形状処理、特にかたちの変形について、この観点からの研究を紹介したい。

3次元形状をコンピューター上で扱う技術は、computer graphics (CG) や computer aided design (CAD) とともに発展してきた。また最近では 3D プリンタの発展により、digital fabrication も盛んである。これらの分野においては、トポロジーのアイデアが本質的な役割を果たす技術課題が散見される。計算機の上で"かたち”を扱うには、まず対象を有限の記号におとす必要があるが、代数トポロジーはまさにうってつけの道具である。この講演では、講演者がこれまで行ってきた共同研究の中から2つのトピックを取り上げ、単体複体で表された曲面の変形と、離散的な空間曲線としてモデル化されたリンク機構の設計についてお話ししたい。

線形代数や流体力学を始めとして,CGには様々な数学が用いられていますが,数学を研究する立場からCG研究はどう映るのでしょうか.海外では意外にも古くから,また日本でも最近は,離散微分幾何学といった新しい数学の源泉としてCGが認識されてきています.数学には「役に立たないほど高等だ」という考え方と同時に,歴史的に物理や工学にアイデアの起源を見つけてきたという二面性があります.CGと数学の関わりについて,トポロジーの研究者である私個人の経験を中心にお話したいと思います.

3次元空間内に複数の形状が与えられた時、 その”平均”とは何であろうか。この講演では、コンピューターで計算・出力するという観点から、 この問に一つの答えを与える。扱う数学の道具自体は高度ではないが、リー群論や離散幾何の アイデアが応用されることで、ペンギンたちが平均される様子をお見せしたい。

3次元空間内の形状をコンピューター内であらわす際,一般的には,点群の座標+単体複体といった構造情報を用いる.この構造情報を保ったまま,点の座標のみを動かす変換を作用させることで,基本形状を変形してデザインしたり,キャラクターをアニメーションさせたりすることができる.この様な視点から,様々な場面で,それぞれの入力に応じて実際に変換を構成する手法を紹介する.扱う数学の道具自体は高度ではないが,リー群論や離散幾何のアイデアが応用され,ペンギン計算が行われる様子をお見せしたい.

3次元空間のアファイン写像は,計算機で形状変形やアニメーションを扱う上で基本構成要素となる.アフィン写像は行列で表すことができるが,これは効率は良い反面,例えば正則行列の平均が必ずしも正則にはならないなど,用途によっては使い勝手が良くない.講演者は落合啓之氏と共同で,リー環のカルタン分解を用いてアフィン写像をパラメトライズする方法を考案した.また,アフィン変換をベースに,より複雑な非線形変換を構成することができるが,これを形状変形とアニメーション生成に利用する例を示す.全ての実装はC++のソースコードも含めて MIT License で公開している.

コンピューターグラフィックス(CG)と伝統的な絵画や映像表現との違いの一つは、前者は時間変化を伴い表現に大きな自由度がある、と言えるのではないか。絵画は自由に視覚効果を創造できるが、動きを表現することは難しい。一方で、実写映像で可能な表現は、物理的な制約を受ける。宇宙空間での大爆発や、恐竜が闊歩する世界は、コンピューター無しでは実現が難しいだろう。CGは、お金と時間のかかる実写の代替として、シミュレーションを用いて映像を作るという方向とは別に、全く物理的な制約を離れて、自由に仮想的な表現を生み出すという可能性も拓いた。その一つの例として、モーフィングと呼ばれる特殊効果がある。少年がカレーを食べるとサッカー選手に変化するCM(古いですが)のあれである。今回は、トポロジーという数学を用いたモーフィングの実現方法について紹介したい。 モノの形状の時間変化を数学モデルを用いて定式化するのだが、実験結果をいかによく説明するかという物理モデルの話と違い、人間の目に心地よければ良いという、正解のない世界で自由にモデルを設計できる。そんなところにどこか純粋数学に通じるものがありおもしろい。

グラスマン多様体や旗多様体のコホモロジー環は、ヤング盤や対称多項式といった対象を通して組合わせ論的に記述できる。特に統一的で簡明な記述は、コクセター群のハッセ図を用いたGKM表示と呼ばれるものであるが、これは常コホモロジー環だけでなく、代数的にはそれを係数拡大した同変コホモロジー環を記述している。トーラス作用を持つ多様体においてはしばしば、その作用まで込めてより詳細な視点で考えることで、統一的でシンプルな記述を得られることがある。この同変トポロジーにおける基本的な見方を、旗多様体を例にとって概観し、応用として講演者による"二重シューベルト多項式"の定義を紹介したい。

少数のキーフレーム(物体の形状データ)から、それらを補間する連続的なフレームデータを生成する技術は、フレーム補間とよばれ、アニメーション作成やインタラクティブな物体変形に使われています。ここでは、特に局所的な形状をなるべく保ったままフレーム補間を行うアルゴリズムを、背後にある数学に焦点を当てながら紹介し ます。技術自体の即効性よりも、アルゴリズムの発見法や数学者の物の見方について主にお話ししたいと思います。